栄養医学の素晴らしい学術大会でした。
東洋医学と栄養医学 東小池雅美栄養医学の相乗効果で患者さんの回復が期待できます。
「東洋医学」セッションの小池雅美先生、久保田佳代先生の講義の座長を努めてさせていただきました。
新型コロナウイルスと栄養医学
柳澤厚生 大会長 座長のもと
「コロナ禍における栄養精神医学 〜コロナ後遺症〜」についてお話しさせていただきました。
本邦で「コロナ後遺症」と呼ばれているPost-acute COVID-19 syndrome(PACS:新型コロナウイルス感染症罹患後症候群)においては、ブレインフォグ、記憶障害、集中力の低下、睡眠障害、抑うつ気分などの神経精神症状を呈することが多い。
栄養精神医学 の立場から最新の知見を交え、コロナ禍における栄養の重要性について論じた。
コロナ後遺症においては、30〜60%程度で疲労感が一番多く、次いで気分や認知の障害が目立ち、不安・うつ、睡眠障害、認知障害がそれぞれ20~30%程度ほどみられる。
疲労感を中心としたこれらの症状の背景にある病態として考えられるのは、①炎症、②酸化ストレス、③免疫応答の障害、④タンパクの異化亢進などである。
これらはビタミン、ミネラル、タンパク質の需要増につながるため、栄養状態を積極的に最適化することが望ましい。また、ミトコンドリア におけるATP産生効率をいかに高めるかという観点からも、これらの病態についてアプローチする必要がある。
特に神経細胞はミトコンドリアが豊富な細胞で、ミトコンドリア機能障害の影響も大きい。栄養面を最適化した後に、断続的な断食( ファスティング)を行うことで マイトファジーが促進され、抗炎症・抗酸化・免疫調節の一助となることが期待できる。
コロナ後遺症に対しては、栄養療法とともに睡眠衛生指導や運動指導を積極的に考慮したい。 まずは、規則正しい睡眠の確保。概日リズムは全細胞代謝、とりわけミトコンドリア活性に影響を与える多くの転写―翻訳プロセスを調節する。そのため、概日リズムの乱れはミトコンドリアの形態変化と機能障害を引き起こす。
睡眠時に分泌されるメラトニンや習慣化された適度な運動は、抗炎症・抗酸化・免疫調節に寄与し、ミトコンドリア機能を高めることにつながる。運動は主にミオカイン放出と脳由来神経栄養因子(BDNF)を介して海馬の神経新生とシナプス形成を促進し、認知機能障害を予防する。
会頭の井手口直子先生、ご参加の先生方、皆さま、リアルでお会いできて嬉しかったです。
今後ともよろしくお願い致します。
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奥平 智之
日本栄養精神医学研究会 会長
医療法人 山口病院 副院長
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