【小麦(グルテン)と統合失調症】
統合失調症のクスリが効果不十分で!たくさん抗精神病薬を使っている人は、小麦に対する抗体(抗グリアジンIgG抗体=AGA-IgG)濃度が高い傾向であったという報告です。AGA-IgGとは、血液検査でわかるグルテン感受性の免疫学的マーカーです。
グルテンとは、パン、パスタなどの小麦粉の加工製品を作る上で大切な、弾力性や柔軟性のもっちり成分です。小麦粉の場合、6~15 %がたんぱく質で、その約85%はほぼ同量のグリアジンとグルテニンから構成されています。
グルテン感受性(Gluten Sensitivity:GS)とは、簡単にいうと、小麦を摂取することで、心身に悪い影響が出てしまう人のことです。腹痛、便秘、下痢、排便習慣の変化、頭痛、皮膚発疹、関節痛、筋肉痛、脳の霧、疲労感、不安、抑うつなど。
①AGA-IgGグループ陽性の統合失調症の治療抵抗性(薬物療法が効果不十分)の患者の数は、AGA-IgGグループ陰性の患者よりも有意に多かった(82%vs39%、P=0.017)。右図
②治療抵抗性の患者のAGA-IgG濃度は、治療抵抗性のない患者よりも有意に高かった(10.79 U/ml vs5.19 U/ml、P = 0.034)。左図
③AGA-IgG陽性の患者は、AGA-IgG陰性の患者と比較して入院歴がある傾向(73% vs 55%、P = 0.079)。
④陽性AGA-IgG群では、陰性AGA-IgG群よりも換CP(クロルプロマジン)換算600 mg/日以上の用量で抗精神病薬を投与された患者が有意に多かった(82%vs47%、P=0.048)。
という結果でした。
Motoyama M, Yamada H, Motonishi M et al.Elevated anti-gliadin IgG antibodies are related to treatment resistance in schizophrenia.Compr Psychiatry. 2019 Aug;93:1-6.
グルテン感受性がある人の治療は、グルテンフリー食となりますが、副作用がないのがいいところです。一部の心身の症状が緩和する人がいるため、グルテンと精神症状の関係は、ますます関心が高まっています。
私の外来では、統合失調症だけでなく、発達障害やうつ状態、慢性疲労など、クスリがなかなか十分な効果がない人は、グルテンフリー食(gluten-free diet:GFD)を最低2週間、試してもらっています。
厳密にやった人の中で、頭のすっきりしない感じ、頭痛、疲労感、憂うつなどが緩和する人がいます。よい変化を感じた人には、小麦を控えた食生活をおすすめしています。
2019年秋から始まる兵庫医科大学精神科神経科の「グルテン外来」は、保険診療内で抗グリアジンIgG抗体、脱アミド化グリアジンペプチド(DGP)抗体の血液検査していただけることになりそうです。
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