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執筆者の写真奥平智之

【認知症の脳における鉄の利用障害】オリゴデンドログリアが作るミエリン膜と、鉄&トランスフェリンの関係

オリゴデンドロサイトは、短い突起のある脳細胞(グリア細胞の一つ)で、これらの突起は脳の神経細胞の軸索に巻きついており、それにより軸索にミエリンを形成しています。このミエリンのとぎれ目から次のとぎれ目への活動電位の伝導(跳躍伝導)を仲介することで、情報の伝達速度が飛躍的に上がります。


このミエリンの膜の形成には、鉄が必要です。 そして、このミエリン膜は、トランスフェリンも産生しています。

トランスフェリンは、鉄を運び出すトラックですが、血液だけでなく神経細胞の中でも働いています。 オリゴデンドログリアの機能が低下すると、ミエリン膜が形成できず、鉄が消費されずに余ってしまいます。 また、トランスフェリン(トラック)は産生されずに、鉄を運び出せなくなってしまいます。 そうすると、ニューロン(神経細胞)の中に余った2価の鉄がフェリチン(3価の鉄)としてたまります。 ヘキサマー(6量体)に、トランスフェリンやフェリチンやフリー鉄がくっついて、老人班(アミロイドプラーク)となります。 アルツハイマー型認知症の脳では、フリーの鉄が増え、鉄を運び出すトランスフェリンが減少し、フェリチンは増加しています。 脳の「炎症による鉄の利用障害」を予防するために、抗炎症、抗酸化対策は大切です。 J Neuroscience Res 31:327-335.1992



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