胆のうは、大切な臓器です。甲状腺にも密接に関わっています。
甲状腺は首の前にある蝶の形をした臓器です。
胆のうがないと、胆汁酸を濃縮できないので、薄い胆汁酸では、コレステロールの可溶化が減少してしまいます。
甲状腺機能が低下すると、体がだるくなったり、憂うつになったり、体重が増えたりします。毛も薄なったり、筋力低下、便秘、コレステロールや中性脂肪の上昇もみられます。
【甲状腺機能の低下➡胆石】
①肝臓のコレステロール代謝を低下させ、胆汁中のコレステロール含有量が増加し、過飽和。
②肝細胞からの胆汁分泌を減少させ、胆管からの沈殿物のクリアランスを損なう。
③胆汁を放出するオッディ括約筋(ホルモンが直接作用)の弛緩が低下し、うっ滞。
④胆のう収縮機能が低下し、うっ滞。
⑤胃腸の蠕動運動が低下するため、食物の排出が遅くなり、胆汁の流れが逆流するなど、胆汁がうっ滞し、胆石の形成につながります。
Laukkarinen, J., Sand, J., & Nordback, I. (2012). The Underlying Mechanisms: How Hypothyroidism Affects the Formation of Common Bile Duct Stones
※甲状腺機能の亢進:コレステロール代謝経路の主要成分である肝核内受容体遺伝子の過剰発現を介してコレステロール胆石を誘発します。
つまり、甲状腺機能は、低下しても、亢進しても、コレステロールの胆石を促進することになります。
Wang, Y., et al (2016). Thyroid dysfunction, either hyper or hypothyroidism, promotes gallstone formation by different mechanisms. Journal of Zhejiang University-SCIENCE B, 17(7), 515-525.
【胆汁酸の不足➡甲状腺機能の低下】
①甲状腺ホルモンのT4(不活性型)からT3(活性型)に変換するのにも「脂肪」が必要なので、胆のうが機能せずに、脂質の吸収が低下すると、甲状腺の機能も低下する可能性。
②胆汁酸不足は、インスリン抵抗性につながるので、不足は血糖値の上昇につながる可能性。そして、インスリン抵抗性は、甲状腺疾患を発症するリスクをあげます。
★40歳以上の年齢層の女性では、無症候性甲状腺機能低下症の有病率が統計的に増加しているので注意。
Ghadhban, B. R., et al(2019). The prevalence and correlation between subclinical hypothyroidism and gall stone disease in Baghdad teaching hospital. Annals of medicine and surgery, 37, 7-10.
💝胆汁酸をサポートするには?💝
①ウルソデオキシコール酸・・・胆汁の流れをよくして、小さめのコレステロール系胆石を溶かすのに適します。肝臓の血流をよくして、肝臓の細胞を守ります。消化不良を改善して食べ物の吸収を助けます。
②サプリやハーブ:オックスバイル(Ox Bile)・・・肝臓における胆汁の生成を促す。牛の胆汁の意味。
クミン、コリアンダー、アジョワン、フェンネル、ミントなどのハーブは、胆汁酸の量を増やします。
Platel, K., et al. Stimulatory influence of select spices on bile secretion in rats. Nutrition Research, 2000;20(10): 1493-1503.
③よく噛んで食べる
④肝臓をあたためる(血流↑)
⑤23時までに寝る(規則正しい睡眠リズム)
⑥交感神経の過緊張をなくす・・・副交感神経優位で胆汁酸が分泌される
⑦低コレステロールにも注意・・・コレステロールは胆汁酸の材料となります
🏵まとめ🏵
甲状腺と胆のう、場所は離れていても、密接な関係。
胆石の予防には、甲状腺の健康が大切。でも、甲状腺機能低下の症状がないこともあるので、気づかずに胆石ができるかもしれない。
胆汁酸は、甲状腺ホルモンの活性化や、インスリン抵抗性の改善・血糖安定、脂肪分解、免疫力にも大切。
【以下、基本的な補足】
●胆汁酸の3つの主な機能は、
(1)脂肪を乳化✳︎すること
(2)コレステロールを排泄すること
(3)抗菌効果を持つこと
胆汁酸は胆汁に分泌され、胆嚢に貯蔵するために濃縮されます。
次に、食べるとコレシストキニンの放出が刺激され、胆嚢が収縮します。オッディ括約筋を介して胆汁酸が十二指腸に放出されます。
分泌される胆汁酸が多いほど、胆汁の流れが速くなります。
胆汁酸の主な目的は、脂肪をミセル✳︎に乳化する界面活性剤の特性を介して脂肪の消化を促進することです。
ホルモン的には、胆汁酸はファルネソイドX受容体にもくっついて作用します。
胆汁酸の腸肝循環を損なうと、肝臓がより多くのコレステロールを使用してより多くを作るように駆り立てられるため、コレステロールが減少します。
Chen, I., & Cassaro, S. (2020). Physiology, Bile Acids. StatPearls
【参考】
✳︎乳化とは?
油や水分のように本来混ざり合わないものが均一に混ざり合う状態のこと
✳︎ミセルとは?
外側が親水基で囲まれ、内部は親油性となる球状の物質です。
石けんやシャンプーなどに使用される界面活性剤の作用は、ミセルによる洗浄作用です。
水中に溶け込んだ界面活性剤は、疎水基を汚れに吸着させます。そのまま汚れを内部に取り込み、ミセルを形成。
その後、ミセルごと洗い流されることで繊維や髪の汚れを落としてくれます。
ドレッシングもそう。
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奥平智之
日本栄養精神医学研究会 会長
医療法人 山口病院 副院長
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