腹部膨満感、ガスが多い、便秘、下痢、腹痛、悪心、倦怠感、肌トラブルなどの症状がある人はいませんか?
便秘や下痢を繰り返す過敏性腸症候群の背景にはSIBO(小腸内細菌の異常増殖:Small intestinal bacterial overgrowth)があることが多いです。小腸に過剰な細菌がいるということです。重度の場合、小腸内の細菌に栄養が奪われてしまい、ビタミンとミネラルの欠乏につながる可能性があります。鉄欠乏女子(テケジョ)の原因になることもあります。
糖尿病や慢性的なストレスなどで免疫力が低下している人は、SIBOになりやすくなります。
腸内細菌による炭水化物の代謝により、水素(H 2)やメタン(CH 4)が発生します。
優勢なガスによってSIBOは大きく2つのタイプに分けられます。
① 水素優勢SIBO《H-SIBO:水素型シーボ》:複数の抗菌ハーブ+低FODMAP。抗生物質治療ではリファキシミン。
② メタン優勢SIBO《M-SIBO:メタン型シーボ》:治療に時間がかかります。複数の抗菌ハーブ+低FODMAP。抗生物質治療ではリファキシミン+ネオマイシンの併用。
Suri, J., Elevated methane levels in small intestinal bacterial overgrowth suggests delayed small bowel and colonic transit. Medicine, 2018; 97(21).
メタンガスは、糖基質の細菌発酵の生成物である水素ガスを代謝する腸内メタン菌によって、嫌気性条件で生成されます。現在、主な原因菌は、Methaninobrevibacter smithiiやMethanospaera stadmagnaeなどの古細菌に属する単細胞生物、およびクロストリジウムおよびバクテロイデス型の細菌種であると考えられています(Triantafyllou, K., et al. Methanogens, methane and gastrointestinal motility. Journal of neurogastroenterology and motility, 2014;20(1): 31. )。
過敏性腸症候群でのメタン生成の程度は、便秘の重症度と相関しています(Chatterjee, S.,. The degree of breath methane production in IBS correlates with the severity of constipation. American Journal of Gastroenterology, 2007;102(4): 837-841.)。
また、セロトニンは蠕動反射の主要なメディエーターです。メタンを産生する過敏性腸症候群の患者は、水素を産生グループよりも血清中の食後のセロトニンレベルが低かったという報告があります(Pimentel, M.,et al. IBS subjects with methane on lactulose breath test have lower postprandial serotonin levels than subjects with hydrogen. Digestive diseases and sciences, 2004; 49(1): 84-87.)。
食事療法では、低FODMAP(フォドマップ)療法が推奨されています。
これは、発酵しやすい4種類の糖類を控えるというものです。
F : 発酵性の O : オリゴ糖 →ガラクトオリゴ糖:レンズ豆、ひよこ豆などの豆類。フルクタン:小麦(パン、ラーメン、パスタ)、ごぼう、玉ねぎ、納豆、キムチなど D : 二糖類 →ラクトース(乳糖):牛乳、ヨーグルト、アイスなど M : 単糖類 →フルクトース(果糖):果物、はちみつなど P : ポリオール類 →ソルビトールやキシリトール:マッシュルーム、カリフラワー、さやえんどうなど
SIBOの人では、納豆、ヨーグルト、発酵食品、短鎖脂肪酸などの腸に良さそうなものも、摂りすぎは、人によってはマイナスになる人がいるということです。
また、SIBO疑いの人においては、乳酸菌などのプロバイオティクスや、オリゴ糖や食物繊維などのプレバイオティクスの投与は、慎重に行う必要があります。
しかし、きのこ類、ごぼうなどの食物繊維を控えることによって、便秘がひどくなる人もいます。自分のおなかの症状をみながら、食物繊維をどの程度とると調子いいか見極める必要があります。SIBO疑いの人は、低FODMAPを試みていったん抜いたら、少しずつ増やしてみましょう。
SIBOの抗生剤治療では、日本では使えませんが、リファキシミンとネオマイシンの併用が使われます。しかし、有益な菌も一掃してしまうことがあります。対処療法的に、抗生剤で一時的に菌を減らしても、SIBOになった根本原因が解決されなければ、再び再発することになります。実際、抗生剤治療をしても再発することが問題になっています。
例えば、「低胃酸」が原因であれば、よく噛むこと、制酸剤をやめる、レモン・梅干し・しょうが湯、消化促進剤である塩酸ベタインの使用、オウゴンやオウバクなどの苦みの系の生薬による胃酸分泌などを考える。
抗菌ハーブは、上手に活用してみましょう。
代表的な抗菌ハーブを、15個挙げておきます。
①クローブ
②シナモン
③シソ
④オレガノ
⑤オリーブの葉
⑥ショウガ
⑦ゴールデンシール
⑧バーベリー
⑨ペパーミント
⑩タイム
⑪セージ
⑫レモンバーム
⑬オレゴングレープ
⑭エキナセア
⑮ラベンダー
などがあります。
ニンニク(アリシンを含む)、グレープフルーツの果肉と種から抽出したグレープフルーツシードもいいでしょう。
クローブ水、シナモン湯、シソ湯もおすすめですが、
SIBOを引き起こす可能性のある細菌は非常に多様であることと、耐性菌のことを考慮して、可能であれば、①2種類以上組み合わせる、②2か月ごとにハーブの種類変える方がよいと考えます。ハーブティーを作ってみましょう。
参照)「血液栄養解析を活用! うつぬけ食事術」
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「メンタルヘルスは食事から」 日本栄養精神医学研究会 奥平智之 作成
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